はこふね

言葉を紡ぎます

米津玄師 2017 LIVE / RESCUE  7.15

 米津玄師はどこまでも表現者なのだと思い知らされた。四分の曲が二時間のライブになったところで、根本はちっとも変わらない。美しい世界が広がるばかりだ。

 

 

 

 今回のライブの箱は”東京国際フォーラム ホールA”、最大で5012人を収容できる日本有数のホールだ。会場に足を踏み入れると見渡す限り座席が広がる。ここいっぱいに人が入り、手をあげ体を揺らして彼の音楽を楽しむのだ。私が初めて彼のライブを見たのが二年前、1000人規模のライブハウスでのこと。そのときには思いもしなかった光景を目の当たりにしてしまった。いよいよここまで来たのだ。

 

 おなじみのサポートメンバーを後ろに引き連れ、登場した米津玄師がわたしたちを招き入れるように腕を広げる。なんという安心感。これから約二時間、彼の音楽にすべてをゆだねていればいい。

  そして「何千と言葉選んだ末に / 何万と立った墓標の上に / 僕らは歩いてくんだきっと / 笑わないでね」こう歌い始めるのだ。痛みが消えなくたって、前へ前へ進むんだというメッセージを投げかけ続けてくれる米津玄師という存在は、私にとって希望で光だと思っている。その思いをより強くしてくれるこの曲ほど、RESCUEの名にふさわしい一曲目があるだろうか。

 

3曲を終えたところで「どうも米津玄師です!宜しく!」

こんなに頼もしい言葉をもらってしまっては、全てを預けてしまうしかない。

 

 カップリングの翡翠の狼、音楽隊で聞くことのできなかったあたしはゆうれいが聞けるのも嬉しい。ずっと会いたかった曲たちだ。しかし何といっても極めつけはBlackSheepだ。はうるで歌ったと聞いたときに、行けなかった私はもう二度と聞くことはないのだろうなんてあきらめていたのだがなんという僥倖。吐き出される煤煙を背景に紡がれる闇の美しさ。思わず口角が上がってしまう。初披露の砂の惑星、ホールを星で煌かせたorion、アニメ映像でボーカロイド版とは別の物語を紡ぎだしたゆめくいしょうじょとその後も次から次へと大好きで大切な曲たちが畳みかけてくる。何という贅沢。曲も、米津さんの安定してきた歌声も、経験が活きているダンスも、一筋縄でいかない性格のにじむ悪戯っぽいパフォーマンスも、照明効果も、なにもかも、ここにあるものは美しいのだ。気づくと、もう3曲しかないと告げられる。もう終わってしまうのか。早すぎる、もっと。願わずにはいられない。あれほど美しい空間を私は知らない。もっと。そして届けられるふたつの新曲たち。最高だ。米津さんらしさは健在でありながらも、また新鮮な音が鳴り響く。どこまで行くんだこの人は。

 

「子どもの頃は、早くここから抜け出したいと思っていました。故郷があまり好きじゃなくて、遠くに行きたいと思っていたんだけど、今はこんなふうに東京で、メンバーがいてスタッフがいて、お客さんも5000人ぐらいいて……もし、今いる場所が嫌だなあと思っている人がいて、何か言えることがあるとしたら……遠くに行け、って言うね(笑)。ありがとう」

 

そうアンコールで告げた彼は、どんな遠くまで行くのだろう。期待せずにはいられない。どこまでも共にと願わずにはいられない。つぎあえるのはいつだ。楽しみだ。

 


1.ナンバーナイン
2.フローライト
3.メランコリーキッチン
4.あたしはゆうれい
5.翡翠の狼
6.Black Sheep
7.砂の惑星 <新曲> ※初音ミク「マジカルミライ 2017」テーマソング
8.orion
9.ゆめくいしょうじょ
10.ゴーゴー幽霊船
11.駄菓子屋商売
12.ドーナツホール
13.アイネクライネ
14.LOSER
15.ピースサイン
16.love
17.fogbound <新曲>
18.春雷 <新曲>
(アンコール)
En1.アンビリーバーズ
En2.Neighbourhood